平成29年3月18日(土)に、白山市松任文化会館において、平成28年度 金城大学・金城大学大学院 卒業証書・学位記授与式が行われました。 今年度は、社会福祉学部社会福祉学科社会福祉専攻100人、こども専攻50人、医療健康学部理学療法学科57人、作業療法学科31人、大学院リハビリテーション学研究科4人の計242人が卒業・修了されました。 また、夜には卒業生たちからお世話になった教職員への感謝の気持ちを込めた、卒業記念パーティーが開催されました。
登壇者一覧■卒業証書・学位記授与 田中 彩(社会福祉コース) 教職免許状授与 ■理事長表彰 ■学長表彰 ■日本社会福祉士養成校協会長表彰 ■日本介護福祉士養成施設協会長表彰 ■全国保育士養成協議会長表彰 ■日本医療教育財団理事長表彰 ■日本理学療法士協会優秀賞 ■日本作業療法士協会優秀賞 ■全国リハビリテーション学校協会優秀賞 ■卒業生記念植樹目録贈呈 ■送辞 ■答辞 |
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遠く冠雪に輝く霊峰・白山の開山からちょうど記念すべき1300年目にあたる2017年の弥生3月、ここ白山市松任文化会館において金城大学・社会福祉学部150人、医療健康学部88人、大学院4人合わせて242人の皆様の卒業式と学位授与式を無事に迎えることができました。卒業生の皆様と、今日まで手塩にかけて卒業生を支えてこられましたご家族および保護者の皆様のひとかたならぬご努力に対し、先ず心よりお祝いと敬意の念を表させていただきます。また、常日頃より本学に対しまして多大のご高配を戴いております山田白山市長をはじめ、ご多忙の中、本日ご臨席を賜りました御来賓の皆様方にも厚くお礼を申し上げます。
さて周知の通り、2013年には65歳以上の高齢者が国民の4人に1人を、さらに2025年には、団塊の世代の方々が75歳以上の後期高齢者の年齢を迎えるため3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上というかってない超高齢化社会を我が国はこれから迎えます。既にわが国の介護費用は既に10兆円を、医療費も40兆円をこえており、これからの超高齢化社会に向けて現在の社会保険制度がはたして存続可能かという大変深刻で重要な問題がこの所マスコミ等で盛んに論議をされております。
このような超高齢化社会の到来を踏まえて、国は20世紀の治す医療から、21世紀初頭には支える医療に、さらに将来は支える必要もない“介護予防の実践”へと軸足を移しつつあります。実際、首相官邸のホームページには、平均寿命の増加分を上回る健康寿命の延長を目標に、2020年までに健康寿命の1歳以上の延長が謳われております。さらに昨年8月には、「老化メカニズムの解明・制御プロジェクト」の名目で、新たな研究費として28億円の概算要求が文科省(厚労省ではありません!)から出されました。その目的は、老化のメカニズムを解明して最終的には老化にともなう認知症、心臓病などの介護を要する加齢性疾患を予防し、医療費や介護費用の削減を図るところにあります。このように超高齢化社会を迎え、現在我が国が解決すべき最重要課題の一つが健康長寿の達成にあるといっても決して過言ではありません。
一口に老化や健康長寿の研究といってもその研究分野はゲノム個別化医療などの高度先進医療から、要介護予防のためのリハビリテーションまで多岐に渡ります。ただ、ここで注意すべきは老化研究というとどうしてもiPS細胞など最先端の高度先進医学分野に目がゆきがちで、「今できる予防」という視点からの医療が軽視されがちになることです。70歳より急速に発症のリスクが高まるアルツハイマー病を例にとれば、その病因となるβアミロイド蛋白の蓄積は45歳前後から始まることが最近解ってきました。そして現在、認知症の大半を占めるアルツハイマー病はこの所増加の一途を辿り、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると厚労省は予測していますが、いまだにその根本的な予防・治療法は確立されておりません。アルツハイマー病はβアミロイド蛋白の蓄積によって引き起こされる脳神経細胞の死滅が原因で、一度発症すると、病状の進行は時間の問題となってしまいます。脳神経細胞の死滅が広範囲に及ぶ終末期になれば、高度先進医療を駆使してもその治療効果は限られたものに成らざるを得ません。細胞レベルでの若返り、即ち細胞の初期化は山中教授のiPS細胞の導入により達成されました。しかし、ヒトの生体における脳などの各臓器レベルでの初期化は、最先端の医学を駆使してもiPS細胞の導入などに比べ、はるかに至難の業と思われます。
一方この所、世界各国でアルツハイマー病が減少に転じたという報告が相次いでおり、高血圧・糖尿病等の生活習慣病の予防がアルツハイマー病の減少をもたらし、その予防を怠るとアミロイドβ蛋白が蓄積し易くなることも解ってきました。実際に糖尿病では、アルツハイマー病になるリスクが健常人より2倍も高いことが我が国の疫学研究でも明らかにされています。生活習慣病の予防には高度な先進医療は必要ありません。2011年に、国連は生活習慣病の予防対策として世界がとるべき5つのアクションを提言しています。“①禁煙、②減塩、③肥満・不適切な食習慣と運動不足の解消、④有害飲酒の是正と⑤心血管系疾患のリスク軽減”の5項目です。これらの今直ぐ実行可能な生活習慣病の予防策こそが、アルツハイマー病などの加齢性疾患の発症を抑え、健康長寿達成の最も効果的な「即効薬」になりうることを示すエビデンスがこの所、世界中で集積されつつあります。
このような時代背景のもと、まさに時を得たかたちで本日、本学は晴れて第一回目の作業療法学科の卒業生31人を送り出すことになりました。さらにこの4月より本学に併設された大学院は総合リハビリテーション研究科と名前を変え、リハビリだけでなく広く他の福祉・医療関係の方にも開かれた研究の場として新たにスタートを致します。このように金城大学は北陸における健康長寿・アンチエイジングの拠点としての道を着実にあゆみつつあります。
現在、日本は世界一の長寿国ですが、同時に世界一の健康長寿国でもあります。少子高齢化の波はこの所世界的な規模で進行しており、我が国には世界に向けて健康長寿の手本を示す使命があります!長寿食としては地中海食を凌ぐ和食や他人を思いやる心などの日本文化の中にこそ健康長寿の秘訣が多々存在するようにも思われます。
かってないスピードで超高齢化社会を迎える日本の将来を世界が注視しています。どうか卒業生の皆様には今後どのような分野に進まれようとも、アンチエイジングの真髄をあまねく世界に示し得る存在としてそれぞれの分野で活躍されますよう切にお願いをして、私の卒業に際しての祝辞とさせて頂きます。