第5回「流通業実務家講師 講演」

2023.07.03 ビジネス実務学科

 

 ビジネス実務学科では「食の商品化と流通」の授業において、フード業界の第一線で活躍されている6名の外部講師をお招きし、業界の仕組みやテキストには載っていない現場ならではのエピソードなどを伺う「流通業実務家講師講演」を行っています。

 6月22日木曜日、第5回のご講演では、ヤマカ水産株式会社の代表取締役社長の紙谷一成様から、水産物の流通や課題、その対策としての技術や商品開発、漁業形態の革新について教わりました。

 

 まず、水産物の流通について、中心的な役割を果たす市場と、そこで流通を仲介する卸売業者の取引について教わりました。市場での取引と言えば「競り」の印象が学生にも強くあったようです。ただ、実務面では他にも入札での取引、相対での取引があり、昨今では相対取引が中心となっているとのことでした。
 次に、水産物業界が抱える課題について伺いました。社会構造の変化とともに、特に勤労世代では家事にかけられる時間が減り、魚離れが起きているそうです。同じタンパク源である食肉との摂取量が逆転したことから、手軽に食べられる商品開発や流通技術、漁業の在り方そのものまでにも改革の目が向けられているとのことでした。
 これらの課題への対策として行われている様々な方面での努力についてもお話しいただきました。まず、魚の消費量を増やすために、下処理や調味を施して調理を簡単にした魚製品の開発と販売が進められているそうです。また、需要の変動や遠方からの需要へ対応すべく、冷凍技術の革新も進められてきたとのことです。その冷凍技術で数週間保存されたお刺身を実際に頂きましたが、解凍されたお刺身だと言われてもわからないほど鮮度が維持されておりました。

 

 最後の対策として、水産物の付加価値を向上させる新しい漁業についてお話しいただきました。方法の変更によって付加価値を上げ、後継者の育成へも繋げている事例として、個人での漁業から法人化した船団での漁業への変更や、天然魚の捕獲から養殖による魚の肥育への切り替えなどについて教わりました。船団での漁業は、役割が異なる複数の船を用いることで、遠く離れた漁場から魚を泳がせたまま運べるため新鮮さが付加価値になるそうです。また、養殖による魚の肥育は、人気の魚種を充分な大きさで安定して供給できる点が付加価値になるとのことでした。
 学生のレポートには、水産物の流通にかかわる様々な人々やその実務について、実際に食べたお刺身を通じて知った冷凍技術の進歩についてなど、新たに得た知識への関心が多く書かれていました。また、水産物を積極的に選ぶようにしたいなど、魚や水産物への意識が向上した学生も多く見られました。